「いくらにすればいい?」マルシェでの値付けの考え方と、3回値上げしてわかったこと

いくらにする? 値付けの考え方 準備編

― 安くすれば売れる、は本当か ―


「安すぎると思われたくない。でも高すぎて手に取ってもらえなかったら怖い」

値付けは、出店者が一番頭を悩ませることのひとつだと思います。 ネットや本で「マルシェ 値段 決め方」と調べても、「原価の3倍」「相場を見ろ」といった答えが出てくるけれど、なんとなくしっくりこない。

その感覚は正しくて、値付けに唯一の正解はありません。 でも、「根拠のある値付け」と「なんとなくの値付け」は、じわじわと結果に差が出てきます。

この記事では、2021年の開店から3回の価格改定を経た経験をもとに、値付けの考え方と実際に感じてきたことをまとめます。

これからマルシェ出店をはじめたいあなたへ何かヒントになれば嬉しいです。

この記事でわかること

  • 原価に含めるべきもの・見落としがちなコスト
  • 相場との向き合い方
  • 「選ばれる価格」をつくるための考え方

値付けの基本:まず「原価」と「利益」を分けて考える

原価に含めるべきもの

値付けで最初につまずくのが、原価の計算です。材料費だけで計算していると、気づかないうちに赤字になっていることがあります。

原価に含めるべきものは、大きく分けると次のとおりです。

材料費・資材費

  • 原材料費(小麦・バター・砂糖など)
  • 小袋・乾燥剤・ラッピング資材などの包装費

間接コスト

  • 工房の家賃・光熱費
  • 消耗品費(型・焼き紙・手袋など)
  • キャッシュレス決済の手数料

出店コスト

  • 出店料・交通費

ぐらの場合、原材料費と資材費(小袋・乾燥剤など)を合わせて原価とし、そのうえで工房の家賃・光熱費・消耗品費を考慮して価格を設定しています。出店料については、現在は固定店舗があるため「広告費」と割り切っていますが、出店がメインの場合はしっかり回収対象に入れていきましょう。

「時給換算」してみると気づくこと

手作りのお菓子やハンドメイドは、製造にかかる時間も立派なコストです。 ただ正直に言うと、小規模マルシェ出店の菓子店で時給換算をすると、価格がとんでもなく高くなる可能性があります

時給換算はコスト感覚を持つためのツールとして使いつつ、現実の価格に全部乗せるのは難しい部分もある。 だからこそ「いかに効率よく作るか」「一度に多く売るか」という視点も、値付けと並行して考えることが大切です。


「相場」はあてにしすぎない。でも無視もできない

マルシェの相場感

焼菓子・食品系のマルシェ価格帯は、ざっくりこのくらいが多い印象です。

ジャンル価格帯の目安
焼菓子(クッキー・焼き菓子1袋)300〜800円
ケーキ・シフォンなど300〜700円
ハンドメイド雑貨500〜3,000円以上
食品加工品(ジャム・ドレッシングなど)500〜1,200円

ただし、同じジャンルでも売れているブースと売れていないブースがある。値段だけで買うかどうかを決めているわけではないのが、現実です。

相場より高くても売れる理由、安くても売れない理由

値段=価値の伝わり方です。

相場より高くても、「なぜこの価格なのか」がブースの雰囲気・POP・接客を通じて伝わっていれば、選んでもらえます。逆に、安くしても「なんとなく手に取りにくい雰囲気」だと、値段は関係なく素通りされます。

他のお店の価格は常に意識しますが、そのまま自分のお店にそのまま反映させるものではない。あくまで「相場感を知るための参考」と割り切るのが健全だと思っています。


「選ばれる価格」をつくる3つの考え方

価格帯を3段階に設計する(松竹梅の考え方)

選択肢が3つあると、人は自然と中間を選びやすくなります(極端回避性)。

  • 一番安い商品(お試し・手に取りやすい入口)
  • 定番商品(一番売りたい・利益の柱)
  • 上位商品(贈り物・まとめ買いニーズ)

ただし、一番安い商品の扱いには注意が必要です。後述しますが、フロントエンド商品には「数量限定」などの工夫をしないと、思わぬ落とし穴があります。

端数価格 vs キリ番価格

「480円」と「500円」、どちらが買われやすいかは商品と客層によります。

少額・気軽に買ってほしい商品はキリ番(300円・500円)にすると会計がスムーズ。 少し上質感を出したい商品は端数(480円・680円)にすると「ちゃんと計算された価格」に見えやすい傾向があります。

キャッシュレス比率が高い場合はキリ番でなくてもストレスになりにくいので、客層に合わせて選んでみてください。

「安く見せる」より「納得感を作る」

値段を安くするより、「この値段で買えてよかった」と思ってもらえる価格設計のほうが長く続きます。

安すぎると、安さを求めるお客様が集まります。それ自体は悪いことではないですが、値上げしたときに離れてしまいやすい。 高すぎると、1回は買ってもらえても、リピートにつながりにくい。

「このお店のこの商品だから、この値段で買いたい」と思ってもらえる関係性を作ることが、長く売り続けるうえでの値付けの本質だと思っています。


ぐらの値付けの変遷:3回の価格改定で感じたこと

ここではぐらの実際のところをお話するよ

開店から今まで

2021年の開店以来、商品ごとに数十円〜150円程度の価格見直しを重ねてきました。 大きな改定は1〜2年ごとを目安に、全商品一斉ではなく少しずつ。商品リニューアルのタイミングで見直すこともあります。

値上げした理由と、お客様の反応

価格改定を続けてきた一番の理由は、原材料の値上げです。ここ数年、原材料費は本当に頻繁に上がっています。こまめに見直さないと、利益がほぼ残らない商品になってしまう。

値上げのたびに「お客様が離れるかもしれない」という不安はありました。実際、多少離れたお客様もいたと思います。でも、売上全体への大きな影響は感じたことがありません

むしろ、長く通ってくれているリピーターさんから「ちゃんと値上げしてね」と言ってもらえたことがありました。続けてほしいから、無理しないでほしいという気持ちだったと思います。それはとても励みになりました。

昨今のインフレでお客様も値上げに慣れてきている部分もあり、「時間が経てば馴染む」という実感があります。

フロントエンド商品での失敗

一番安い商品(お試し価格の商品)を設けていたとき、それのみをまとめ買いしたお客様に「全部別々の袋に入れてください」と言われたことがありました。

その頃は、袋も無料でサービスしていたこともあり、値段的にも手間的にも、正直なところ少しダメージがありました。

一番安い商品は「入口」として大切ですが、大量購入されるなどの購入パターンを想定した設計にしておかないと、オペレーションが崩れてしまいます。数量限定にする、セット販売の形にするなど、フロントエンド商品には工夫が必要だと学びました。

※ フロントエンド商品とは:主に新規顧客を集めるための低価格または無料の「入口商品」のこと

今の値付けで意識していること

今は、値付けをするときに次のことを意識しています。

買ってほしいお客様を具体的にイメージする 「誰に買ってほしいか」を先に決める。リピーターさんを思い浮かべながら「この商品にこの値段の価値があるか」を考えます。

安すぎるお店は、長く続かない 安い価格で売り続けてお店が潰れても、お客様は喜びません。価格と商品の価値については、お客様目線でも考えるようにしています。

値上げするときは、商品の「プラスアルファ」を考える ただ値段を上げるのではなく、パッケージを変える・内容をブラッシュアップするなど、商品としてのレベルアップとセットで考えています。商品そのものを変えずに伝え方を変えて、価値を感じてもらいやすい工夫をすることもあります。お店全体として少しずつ成長していくイメージで、値上げのタイミングをとらえています。


まとめ:値付けに正解はないけれど、根拠は持たせる

チェックポイント確認すること
原価材料費・資材費・間接コストまで含めているか
利益続けられる利益率になっているか
相場参考にしつつ、そのまま合わせていないか
納得感お客様目線で「この値段で買いたい」と思えるか
価格設計3段階の価格帯になっているか

値付けは「一度決めたら終わり」ではなく、出店しながら調整していくものです。 最初から完璧な価格を出そうとするより、根拠を持った値段でまず出してみて、反応を見ながら見直していく。そのサイクルを続けていくことが、長く続けていく為に必要なことなのではないかと考えています。


ディスプレイや導線を整える方法はこちらの記事で。
購買心理の基本はこちらの記事で詳しく解説しています。